虫と人間(3)

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害虫に関連するおもしろい本を見つけた。ヨーロッパで一時期、動物裁判が頻繁に行われていたのだそうだ。動物には、昆虫も入る。その中に、ゾウムシが裁判にかけらた話が出ていた[池上俊一『動物裁判』(講談社現代新書、1990)の93頁]。概略は以下の通りである。

訴えがあると、裁判所はゾウムシに出頭を命じる。出頭しない場合(出頭するわけはないのだが)補佐人・代訟人が任命される。弁護人は、ゾウムシがブドウを食べるのは、神の法・自然法で是認されていると主張する。これに対し住民の弁護士は、動物は人間の利益になるように作られたのであり、かれらは、人間の権利を侵害する権利はないとする。ゾウムシの弁護士は、たしかに、人間は動物の上に立ち、それに指令を与える権利はあるが、罰したり禁止したり破門したりする権利はどこにもない、と主張する。裁判官の判定は、ゾウムシの所有権をみとめ、適切な土地を与える。

この奇妙な制度は、自然に対するおそれから征服への変換、自然宗教からキリスト教への変換の時期(12〜15世紀)に生まれたという。日本において、このようなことが起こらなかったのは、仏教の思想によるところが大きいという[池上俊一『動物裁判』(講談社現代新書、1990)の19頁]。仏教においては、古来、「人間はたとい生類の筆頭であっても、その仲間であり、そこの本質的な相違はない」と考えられた。もちろん輪廻思想も、それと関連している。
動物裁判という事実は、我々に、自然と人間の関係・宗教の力を鮮やかに見せてくれる。そして、宗教そのものも、それが生まれる土地における「自然」の性質に強く影響されるのではないか。熱帯アジアのような、自然の回復力の強い地域と、回復力の弱い中東・ヨーロッパでは、自然に対する感情が異なるのは当然であり、そこから生まれる宗教の性質が異なるのも当然なのだろう

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