ハイイロチョッキリ(2)

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生物の遺伝的進化


 地球上に昆虫が姿を現わしたのは、三億~四億年前といわれる。そして、2億5000万年前には主要な進化を終え、現存する昆虫の大部分が生存していたという。主要な進化とは、先ず飛べること。これは、両生類など昆虫の後に陸上に上がってきた生物から身を守るのに有効だったのだろう。ちょっと気付きにくいが、羽を折りたためるというのも重要な進化であった。これにより、岩の割れ目や落ち葉の下などに身を隠すことができるようになり、捕食者からの逃亡、季節の変化により有効に対処できるようになった(トンボは羽を折りたためない古い形態を保っている現存する昆虫である)のだそうだ。 
 進化の実例として、"ダーウィンフィンチ"と呼ばれるガラパゴス諸島の、小さな鳥のくちばしの形が島ごとに違うのが有名であるが、日本にもよい例がある。カラスアゲハという蝶がいる。紫色の大型のアゲハチョウで、千島列島から南は八重山諸島まで棲息する極く普通の蝶である。この普帳の蝶が、進化論に興味深い話題を提供してくれる。カラスアゲハの大きさや翅の模様が、棲息地によって少しずつ異なっているのである。特に九州から台湾の間の南西諸島では、島ごとの変化が大きくそれぞれ亜種となっている。なぜこのようなことがおこるのだろうか。一つの種が二つの種に分化するメカニズムとして最も有力なのは、次のようなプロセスである。まず一つの種が二つの群に分かれて隔離される。二つの群の間での交配による遺伝子の混合がないまま長い年月を経る。その間に、おのおのの群のなかで小さな偶然の突然変異が積み重なって、二つの群は次第に違った種へと変化していく。このような隔離と偶然性が新しい種を作る主なメカニズムだとすると、隔離される群の個体数が少ないほど、新しい種はできやすい。南西諸島のカラスアゲハがトカラ、奄美、沖縄、八重山と小さな島ごとに形態が異なっている事実は、隔離と偶然により種が形成された実例と考えることができる。
 また、自然淘汰を実感させてくれるものに「擬態」がある。食物連鎖の中で、捕食者から逃れるため、速い羽や足を持つ・穴に潜り込む・異臭を放つなど、生物達は様々な工夫を凝らす。昆虫も例外ではないが、昆虫にはもっと高等なテクニックを使うものがいる。ある種類の昆虫は体内に毒素を保有している。捕食者である鳥がそれを食べると、その苦さにすぐ吐き出し、その後はその種類の昆虫を食べなくなるといわれる。これらの昆虫は、翅の派手な模様などで、鳥などの捕食者に自分には毒があることを警告する。信じられないことに自分は毒を持っていないのにもかかわらず、毒のある昆虫の姿形・色を真似るものが現れる。これが擬態である。蜂や蟻のように他の生物から嫌われているものやゾウムシのように甲が堅く捕食者が食べにくいものなどに擬態するものもいる。このように捕食者からの防衛に有利な条件を持つ種に似せる擬態をベイツ型という。一方主として植物に姿形・色を似せ、周囲の環境にとけ込むようにするものもいる。これをカモフラージュとか隠蔽的擬態とよぶ。


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