私の本棚(9):緑の資本論

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著者:中沢新一
出版社:集英社
出版年:2002

中沢新一が、9.11にショックを受けて書いたという。「圧倒的な非対称」、「緑の資本論」、「シュトックハウゼン事件」の3章からなる。いずれも現代の問題をこれまでとは異なる視点から分析している。

心に残る一文: イスラームは、いかにも「最終・至高の一神教」らしく、利子(利潤) の発生を倫理的禁止という形を通して抑制しょうと試みてきた。そのために、その世界では資本主義の形成が、長いことおこらなかった。利子は資本主義の原子である。この原子を発生の段階で抑制する「分子レベル」の改革を通して、イスラームは貨幣増殖を基本とする資本主義社会の出現を、押しとどめてきた。
 ところが、同じ「アブラハムの宗教」である一神教の立場に立ちながら、キリスト教世界では、生産力の増大と商業活動の活発化が本格化しはじめる十三世紀以降になると、利子・利潤の獲得に対する抑制を、教会が急速に弱め始め、そこから本格的な資本主義の形成への道が開かれるのである。これはたんにイスラーム圏ではおこらなかった宗教の影響力の低下が、キリスト教圏ではおこった、というにすぎないのだろうか。それとも、キリスト教の思想構造の内部に、自己増殖をおこなうものの活動を容認するような可能性を秘めたなにかの要素が、はじめからはらまれていたためだろうか。
(68頁)

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