メディアとしてのケータイのポジション:その3

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では、人工的な脳ではなく、人間の脳との組み合わせは可能でしょうか。単に身体の五感の延長として、視覚や聴覚を電気通信に置き換えるのではなく、脳という情報処理装置つきの五感を意識した総合的なメディアとして、ケータイを考えてみましょう。
以前、マルチメディアという言葉がはやった時、西垣通は、これを「理性と感性の出会い[1]」というフレーズで表しました。。脳の機能を知性(左脳)と感性(右脳)に分けるとすれば、コンピュータはもっぱら左脳によって使われてきたといってよいでしょう。しかし、脳という情報処理装置つきの五感を意識した総合的なメディアとしてケータイを捉えると右脳の分野に入っていけるかもしれません。ここからどんな世界が生まれるのでしょうか。
 その答えの一つは、「アクセシビリティ」と、「インタラクティブ性」の向上にあるのではないでしょうか。アクセシビリティの向上とは、通信により自分のほしい情報を得やすくするということです。その相手は、人間のこともあるだろうし、データベースに眠る情報の場合もあります。人間が自分の脳で考えるのと同様、早さと使いやすさをそなえたインタラクティブなインターフェイスで、高度なアクセシビリティを実現できれば、今よりもはるかに人間の脳との共同作業が進むのではないでしょうか。
 ヴァネヴァー・ブッシュが提唱した「連想索引法」を、テッド・ネルソンが「ハイパーテキスト」として発展させ、ビル・アトキンスがマッキントッシュ上で実現した「ハイパーカード」は、コンピュータ分野における情報へのアクセシビリティ向上への扉を開きました。さまざまなメディアを使えるケータイの機能を駆使すれば、「理性と感性の出会い」を活かした一層のアクセシビリティ向上手法が生まれることが期待できるのではないでしょうか。
 さて、ではケータイでの制限(画面の大きさ・通信速度など)は克服できるのでしょうか。すでに実現しているケータイ・インターネットのアクセシビリティは、従来のインターネットとは異なる形態となっています。そして、それは大多数の人にとって、コンピュータによるインターネットアクセスよりも、遙かに容易なものとなっています。ケータイ・インターネットでその一端が実証されたように、この制限が、コンピュータ/インターネットとは異なったインターフェイスを生み出すきっかけとなるかもしれません。小さな箱に詰まった様々なメディアを時には使い分け、時には連動させ、情報に対してアクセスしてゆく、そして、ケータイのもつ制限は、必然的にネットワークとの連携を強化してゆく、そんな図式が目に浮かびます。又、小型の利点を生かして、これを手に持って振るとか、ケータイをもって空中に文字を書くと情報が伝わるなんてことも考えられる(モーションセンサー付きはもう販売されています[2]し、空中に表示するタイプも現れました[3])かもしれません。
参考文献:
1:西垣通「マルチメディア」、岩波新書、岩波書店、一九九四]二六頁
2: http://www.vodafone.jp/japanese/products/kisyu/v603sh/
3: http://www.tarosite.net/2004/06/nokia_3200.html

本文は、ケータイ進化論(NTT出版)p36に収録


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